右翼/左翼を分かつもの~日本の外交政策の焦点とは?~

政治的記事。苦手な人はスルー推奨。

 

TwitterTogetterでの議論を見ていると、「ネトウヨ」や(少なくなったが)「ブサヨ」などのレッテル張りが行われることがある。そのあと「ネトウヨの定義は?」とかいう話になって泥沼化することが多い。ネトウヨどころか右翼と左翼の定義も厳密には不可能であるが、一般的にどのような主張をすれば右翼/左翼になるのかということは、吟味しても良さそうである。

 

右翼と左翼の語源はフランス革命までさかのぼるといわれるが、右翼とは保守派、左翼とは革新派の事を指すらしい。世界的にこのような区分によって分かれるが、何をもって保守というのは国によって異なる。アメリカの例を見てみよう。

 

         左翼              右翼

支持政党     民主党             共和党

出身       太平洋、大西洋沿岸の都市部   中南部の田舎   

南北戦争時    北軍              南軍

銃規制      賛成              反対

同性婚      賛成              反対

中絶       賛成              反対

 

アメリカの場合は右翼=保守、左翼=革新という区分けがストンと理解できる。しかし、これが中国になってくると話が難しくなってくる。

         左翼              右翼

政治志向     平等              自由

民主主義     直接民主制           間接民主制

毛沢東時代    賛成              反対

グローバル化   反対              賛成

経済       福祉国家            自由市場

参照:

オレ的中国の実態 : 訳してみた:図でわかる中国の左翼と右翼

 

といった風にいわゆる右翼=保守、左翼=革新という構図が逆転している。つまり、中国では左翼=保守、右翼=革新という風になる(これは毛沢東がもともと共産主義で左翼だったから、そのまま左翼が基準点になったらしい)。

 

では日本の政治意識はどうなるだろうか。

 

         左翼              右翼

太平洋戦争    否定的             肯定的

軍事力の行使   否定的             肯定的

東アジア政策   アジア共同体          脱亜論

9条       個別的自衛権          集団的自衛権

改憲       NO              YES

同性婚      賛成              反対

グローバル化   賛成              反対

経済       福祉国家            自由市場

 

基本的に右翼=保守、左翼=革新という構図からそう逸脱するものではない。しかし、これまで見てきた結果、それぞれの国には固有の争点があり、それが右翼/左翼の分類に多大な影響を及ぼしている。アメリカでは南北戦争、中国では毛沢東時代の評価、知り合いの韓国人に聞いたが、韓国では北朝鮮への態度が右翼/左翼の分水嶺になるという。日本はどうであろうか。

 

言うまでもなく、日本の争点は太平洋戦争に評価、これに尽きる。面白いことは、この戦争の評価のいかんが、現在の外交政策の違いを生み出しているところにある。例えば太平洋戦争を肯定する層(右翼)は、脱亜論と日米同盟を説いている。太平洋戦争を批判する層(左翼)は、植民地主義の償いとして、アジア主義と一体化している。ここから、日本の外交は、現状の認識ではなく、過去の印象で決まっているということが出来るだろう(これはゆゆしき問題である)。

その中でも極左に属する人達は、一度政権をとるとこれまでの外交政策の根本を破壊し、日本を破滅の道に進ませる恐れが高いという点で最も危険である。彼らの脳内はお花畑であり、ある種の独善的な無抵抗主義が基本路線である。彼らの描く日本の外交政策は、日米同盟の破棄から自衛隊の廃止にまで連なり、その理想主義的思考は、戦略的思考の欠如という言葉では済まされないほど取り返しのつかないものである。

私が期待するのは、これからの外交政策を決定していくうえで、現実的に日本が置かれている情勢を理解できる、「ミリオタ」or「ミリタリークラスタ」と呼ばれるライトな右翼の層がイニシアチブをとり、日本の外交形成に寄与していくことである。ミリオタは兵器好きの集まりだが、その兵器がどのような思想・背景で開発されたかとか、どのように用いられたかについても知識があるという点で、戦略的思考ができる。彼らが、ライト左翼~中道派(日本人のマジョリティ)に戦略的思考の必要性を訴えることによって、日本の外交政策はより洗練されたものになるだろう。

ただ一つ残念なことは、ミリオタ層は極右層と同盟関係、若しくは黙示的に協力関係にあることが多い。それはミリオタ層の興味が旧日本帝国軍の兵器であることが多く、それを肯定する極右層とある種の互恵関係にあることが理由である(ミリオタ層は旧日本軍の栄光について極右層に説明することができ、極右層はそれに対して称賛を与えることができる)。私が見てきた中で、どれほど中立的なミリタリークラスタも、太平洋戦争については、ある種の称賛を与えるか、黙るかしかしていない。いかに日本が右傾化しているとはいえ、過去の戦争の評価を変えるほどには至っていない。日本人のマジョリティは、太平洋戦争を批判的に見ているか、少なくとも肯定していない。残念ながらミリオタ層が太平洋戦争を肯定している以上、マジョリティ層がミリオタ層の主張する戦略的思考について耳を貸す可能性は低いだろう。ミリオタ層に必要なことは、極右層と決別し、もう一回太平洋戦争について冷静に考え、批判的評価を恐れないで言うべきである。そうすることが出来たならば、ミリオタ層はマジョリティ層と「理想的な結婚」をすることができ、日本の外交政策に戦略性が生まれるであろう。