プラメモはなぜ失敗したのか?

プラスティック・メモリーズ。

動画工房とシュタゲの脚本家林直孝がタッグを組み、期待値が高かったオリジナルアニメである。

たが、ここにきて「失敗アニメ」の烙印を押されつつある。私もいくつか不満点を見つけたので、今回はその要因を少し検証してみたい。

 

1. 何がしたいのかわからない

まず、これに尽きる。

近未来。アンドロイド。10年で尽きる寿命。ターミナル(終末医療)ケア。思い出と記憶。

素材としてはいくらでも膨らませていけるようなものを沢山詰めておきながら、8話になっても主題(テーマ)が見えて来ない。もちろんいわゆる「日常系」と呼ばれるアニメはテーマが無くても構わないし、シリアス作品がすべてテーマを内包すべきかというとそうでもない。しかし、テーマという軸があった方が視聴者は物語の展開が分かりやすい。特にプラメモの設定は日常からかけ離れており、奇抜なものなので、テーマという軸を与えることは重要である。もし日常系をやりたいんだったら最初からもっとありふれた設定にしとけよ、と思う。

より詳しく分析するなら、4話辺りまでは「思い出の価値/意義」を主題に物語が進行していた。しかし5話で回収出来なかったアンドロイドが暴走する話がされると、物語は「人間とアンドロイドの違い」といった様相を帯びてくる。

このテーマは人間の「心」の問題を扱うもので、フィリップ・K・ディック代表作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」などSF作品では盛んに論じられてきたテーマである。私は、5話視聴後、プラメモはシリアス展開に移行し、アンドロイドの隠された秘密とかが暴かれるのかと思った。しかし、物語は当初のテーマに逆行し、「アイラとの残された時間をどう過ごすか」というテーマを軸に物語が紡がれる。この行ったり来たりな感じが、プラメモという作品を複雑なものにしている。単純に言えば、「プラメモってどういう話だったの?」って知らない人に聞かれた時に、なんて答えていいか迷う作品なのである。

 

2. 設定がおかしい

 もう一つの不満点は、設定におけるリアリティの無さである。いや、もともとプラメモはSFチックなので、リアリティは無いのは当たり前なのだが、たとえそれを許容したとしても、登場人物の心情とか心の機敏が理解不能なのである。なぜそういう結論に至った?と聞いて回りたいぐらいである。

 

『プラメモ』5話を見た後にファンが描いた漫画の突込みが的確すぎるwwwww|やらおん!

 

「アンドロイドが暴走する」というのがアンリアルなものとして感じられるのは、アンドロイドが人間と同じ扱いを受け権利が保障されている、という設定にある。もしアンドロイドが暴走する可能性があるならば、アンドロイドの権利は厳しく制限されなければならない。いや、そもそもアンドロイドは人間に危害を加えるとこができるのか?有名なロボット三原則はどうした?*1 アンドロイドは人間に反抗できるのか?アンドロイドに心はあるのか?

これら全ての疑問は、プラメモにおけるアンドロイドの存在の設定が曖昧である、という事実に起因している。ファジーな、人間に限りなく近いが人間でない「アンドロイド」という存在が、どうプラメモの中の社会に受け入れられてきたのか、という問いを解答不能なものにしている以上、我々が主人公たちに共感を抱くのは難しいし、前述した「人間とアンドロイドの違い」というテーマは無意味になってしまう。*2

 

なぜアンドロイドの設定が曖昧なまま放置したか、という至極まっとうな問いに対しては、私は一つの仮説を用意している。それはプラメモは「10年で消えてしまう記憶」を持った少女という設定を作りたかったからだと思う。プラメモのテーマは難解だが、かすかな読解力で読み取ってみた結果、私は「10年で記憶が失われてしまう少女と思い出を残すことに意味があるのか?」というのがプラメモの主題だと感じた。しかし、ここで問題が発生する。それは、10年で記憶が無くなるという設定が非現実的すぎるのである。*3 そこで、10年で記憶が無くなる「人間」ではなく、10年で記憶が無くなる「アンドロイド」を登場させ、人間の役割をアンドロイドで代用したのだと思う。

 

この考えに従えば、プラメモにおける人間とアンドロイドの違いはほとんど無い、ということである。唯一の違いは不死性と10年でなくなる記憶である。これは8話で主人公がアイラに告白する場面でも確認できる。普通相手が人間でなく、機械であるならば、恋愛感情を持っていいか自問自答するものだ。しかし主人公は一切そのようなそぶりを見せない。これは、プラメモの世界において人間とアンドロイドは同一として扱われていることの証左である。(なので、なおさら「アンドロイドは暴走する」という人間との違いを強調させる設定は余計だった)

 

以上の2点がプラメモで不満であった点である。いろいろ御託を並べてたが、私は最終話まで見るつもりである。最後にアイラとの思い出を共に風呂敷をたためば、1クール通しで見た時に、良作になることは間違いないし、なによりアイラがかわいい、ので。

*1:

  • 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
  • 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
  • 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

*2:

○○という設定が曖昧なまま、○○について感想を聞くようなものである。例えるなら、数式が不明なのに答えを聞かれる感覚である

*3:インなんとかさん・・・。